●X1-CSの改造

キーボード改造の詳細

1.メンブレンキーボードの構造

メンブレンキーボードの構造といってもピンからキリまでありますが、近頃の安い(500円~3000円位)キーボードの構造を簡単見てみます。キーボードを分解してみるとわかるのですが、とてもシンプルな作りに驚きます。
基盤はエンコーダー回路基盤のみで、これも樹脂で固めたICと抵抗とコンデンサ数個にLEDしかのっていません。あとは、スイッチをオンにするのと、キーを戻す両方のためのゴムがキーの下にあり、あとは3枚の導電インクでパターンが書かれたシートだけです。このシートはマトリクスを解析するのに使用します。
シートはインクでパターンが書かれたシート2枚にキーの位置に穴の空いたシートがはさまれる形になっています。穴の空いたシートが挟まっているため、通常は2枚のシートの間に1/10ミリ程の隙間があるため通電しないのですが、キーを押すと、キーの下にあるゴムクッションで上側のシートが押され、通電してスイッチが入る仕組みになっています。

表1 マトリクス表

図1

図2


2.キーボードマトリクス表の作成

 

市販されているPS/2キーボードのエンコーダー基盤を、改造PCに使用するためにマトリクスを調べる必要があります。この調べたマトリクス配列通りに改造PCのキーボードを配線しなおせば、エンコーダー基盤がそのまま使用できるわけです。

 

表1が今回分解して使用したキーボードのマトリクス表です。

回路がどうなっているかを簡単に説明すると、表の横1縦9に「F5」キーがありますがこれは回路で書くと、図1のようになります。F5キーを押すと、1番線と9番線の間が通電し、キーが押されたことがわかります。これを図2のように配線していったのがキーボードのマトリクス配線ということになります。

 

このマトリクス表をキーボードの配線から調べるには、それぞれの線をずっとたどっていってどのキーに配線がつながっているかを見つけます。このマトリクスでいうと、1から27までの27本の線について調べることになります。

 

先の説明で、シートが3枚組みになっていて、穴の空いたシートを真ん中にして配線シートが2枚あるといいましたが、このマトリクス表と対応させると、1から8が1枚の配線シート、9から27がもう1枚の配線シートに配線されています。そして、キーが押されると、2枚の配線シートの間で通電する仕組みになっています。

メンブレンキーボードの配線シート1

メンブレンキーボードの配線シート2


3.キーボード基盤のパターンカット

キーボード基盤の配線を変更するためにパターンカットをします。どのように、パターンカットをするかというと、キースイッチの端子が全部どこにもつながっていない状態にします。
写真 で説明すると、黒く丸で囲んだ部分がキースイッチの2つの端子になり、赤い線で書いたようにパターンカットしています。
このパターンカットはカッターで行うのが一般的ですが、私は、プラカッターでやっています。

パターンカット&配線

エンコーダー基盤への配線


4.キーボードの配線

 

パターンカットが全部終わったら次はキーボードの配線です。単純作業ですが大変面倒です。

また、半田付けをしっかりしておかないと、後々、動かなくなったりします。

配線の仕方は、キーボードのマトリクス表に従って、同じ番号同士をつなげていきます。例えば、1番線なら[F5][PScreen][F10][PageDoen]

[7][8][9][0][End][4][3][2][1]をつなぎます。このとき、キーの端子は2つあるので、例えば上側と下側の配置なら、上側の端子には1~8番線、9~27番線は下側の端子につなぐといったように決めて配線する必要があります。

 

配線をする前に、どの端子がどのキーなのかわかるように、私は、油性のマジックで、どの2つの端子が対なのかがわかるように、丸で2つの端子を囲み、キーの文字を書いておきます。どの2つの端子がキーの端子かわからない場合には、テスターで調べます。

 

配線はジュンフロン線で行います。多芯線でおこなってもいいと思いますが。やわらかすぎて垂れてしまうので固定するのが大変なため、私はジュンフロン線で配線しています。線の太さはお好みでいいと思います。

半田付けの時には、半田を端子に少し補充して一度溶かしたあとで行ったほうが半田ののりがよく半田付けがうまくできます。特に、改造するキーボードは古いものが多いからかわかりませんが、もとから付いている半田だけで配線するときっちりとできないことが多いです。

 

キーボード面の配線が終わったら、キーボードエンコーダー基盤を改造キーボードにうまく固定して1から27番の線をエンコード基盤に配線します。

キーボードの裏面は配線が入り組んでこのままでは外れやすいため、ホットボンドで線を固定します。

全部はやる必要はなく、垂れているような個所だけやれば十分です。

一度固定してしまうと外すのが大変なので、固定する前に、キーボードがちゃんと動くか確認してから行いましょう。

配線全体図


5.足りないキーについて

以上でキーボードの改造は完了なのですが、異機種キーボードの改造で問題になるのが足りないキーが出てきてしまうことです。キーボードはどんどんキー数が増えてきているため、昔のキーボードにはないキーがあります。また、一部ですがカナの配置が異なるものがあります。
基本的に、このページで紹介したキーボードの改造方法の場合は、割り振れないキーがあっても仕方がないと割り切ることです。自分の使用頻度の高いキーから割り振っていき、割り振れなかったものはあきらめましょう。でも、インストールの時などにこのキーを押しなさいと指定されたりすることがあるので、そのときはフルキーに差し替えて使います。
どうしても、使いたいキーが割り振りきれない場合は、FN(ファンクション)キーを使うといいと
思います。これはキー数の少ないミニキーボードに有るキーで、FNキーを押しながらキーを押すことで、キー数の少ないキーボードに多くのキーを割り当てています。ミニキーボードは少し値段が高いですが、そのエンコード基盤を使うとより多くのキーが割り当てられます。
全部を割り振りたい場合は、エンコード回路を自分で作るしかありません。これには最近とても便利なワンチップマイコン(PICなど)を使うことが多いです。このときは、改造する古いキーボードのマトリクスを調べることと、PS/2信号の規格がわかっている必要があります。